ブリテイン郊外に住む農夫がいた。
いつもこの時期になると、少し黄色がかった畑の土を見て、農夫はため息をついた。そして上空を少し見て、耳をすました。ゴオゥ、ゴオゥと今日はやけに風が強い。 こんな日は畑仕事をあきらめて家の中の雑用を済ませることにした。小雨のように降ってくる黄色い砂で畑が覆われるからだ。それを吸い込むと体に悪いから注意するように、とブリテイン衛生局の人が言ってたのだから、間違いはなかろう。 家の中を片付けながら、ひとつの話を思い出していた。
数か月前、ある旅の学者が農夫の家を訪ねてきたことがあった。何日もまともに食事をしていないという、その学者に、農夫は蓄えていた食料と水をわけ、1晩泊めてやり、翌日に送り出したのだが、今頃、どこにいるのやら。
その学者はラックと名乗った。
「おまえさんは、こんな話を知っているかい?」
『王都ブリテインの近くにダンジョンがある。Despiseと呼ばれるダンジョン前には深い森が広がっているのだが、そこに人語を理解する2頭のクマが住んでいた。 1頭目の熊は、昼間は川で泳ぎ、魚たちと追いかけごっこ。夜は星灯りの下で木の実を探し食べながら歩き、疲れたなら近くの洞窟で眠った。 2頭目の熊は森の木々の下ではしゃぎまわった。そして大好きな蜂蜜を食べる。 やがて1頭目の熊は猟師に狩られてしまった。今は、床の敷物になって、ご自慢の顔を人間の足跡と扉でへこまされている。 2頭目の熊は森の奥深くにあるキノコの輪に入ってしまった。そして今は幽霊や精霊らとともに熊風の奇妙な踊りを踊り続けている。 そう、だから森の中では陽気に踊っちゃいけないんだ。眠ってもいけない。それを守らないと道に迷い、森から出られなくなるよ。 地中に眠るすべての熊たちのために歌おうか。鎮魂の歌を。このサムレスの日の終わりに。』
「……というものなんだが、本が古すぎてな。残っているのは、ここの部分だけなんだよ。私はそのクマたちにあってみたくてね」
今、ここにあの学者がいたのなら、このことも知っているかもしれない。
ラックを探しに行きたい。でも、自分は1人の農夫にすぎない。旅の知識もなければ、同行者もいない。何より、勇気が出なかった
今回はCoakiさまにご応募いただいたストーリーを元にイベントとして実施いたします。
【開催日時】 8月8日(土) 22時~
【集合場所】 トランメル ブリテイン第一銀行前 (六分儀座標 6o 14′S, 7o 39′E) ※当日ニュジェルムEMホールよりイベント会場まで送迎ゲートを設置します。
《イベントにご参加の皆さまへ 注意事項・お願い》